はじめに -Introduction-
ども。老樹です。昨今、スタートアップという言葉が世間を賑わせ、ひそかに起業ブームが到来しています。独立起業する、つまり事業を始めるときに最初に考えるべきものが”事業ドメイン(事業領域)です。そして、この事業ドメインを正しく理解することで、なんと”商売の本質”までわかってしまうという、素晴らしく便利であり、恐ろしいほど奥が深い概念でもあります。
本記事では、事業ドメイン(事業領域)を活用したスタートアップの成功法について、具体的な例を交えながら解説します。
それではさっそく始めましょう。
事業ドメイン(事業領域)
商売の本質とは
ここに、会社を辞めて自分で商売を興したいというAさんがいます。しかし、Aさんには起業に必要な資金(元手)がありません。そこでAさんは叔父さんで会社経営者のBさんから開業資金を借りようと思います。
おじさん、これから自分でお店を経営したいんだ!
だから、お金をかしてよ!必ずうまくいくとおもうからさ!
ほぅ。どんなお店を始めるつもりなんだい?
コーヒーショップさ!コーヒー豆にこだわって、おいしいコーヒーを出すお店を作るんだ。
必ずはやると思うよ!コーヒーの淹れ方は研究したし、条件のいい空き店舗も見つけてあるんだ!
ずいぶんと自信がありそうだねぇ。色々と準備していたようだし。
それじゃぁ、大事なことを聞いておこうか。
A君はお客さんに何を提供して、お金をもらうつもりなんだい?
B叔父さん、話聞いてた?
だから、”コーヒー豆にこだわったおいしいコーヒー”って言ってるじゃないか!
そうか・・・A君はまだ商売というものが分かってないみたいだね。
残念だけど、今の君は必ず失敗するからお金は貸せないな。
B叔父さんは「やっぱりな」という感じで、Aさんにはもう少し考える時間が必要だと思い、出資を断ります。
このやり取りで、BさんはAさんに何を期待したのでしょうか。Aさんの何が悪かったのでしょうか。コーヒーは本当においしいかもしれませんし、出資金額によっては条件のいい場所にお店を出せるかもしれません・・・。最後に叔父さんは
「A君はまだ商売というものが分かってないみたいだね。」
と言っています。叔父さんはAさんからどのような答えを期待したのでしょうか。そもそも、”商売”って何なんでしょう??
このとき、Aさんは「事業ドメイン(事業領域)」についてしっかりと理解しておくべきでした。
事業ドメイン(事業領域)の3要素
ドメイン(事業領域)とは、企業の活動内容や成長の方向性を次の「顧客」・「機能」・「技術」の33次元で定義したものです。もう少し詳しく書くと、
「私たちは①〇〇という市場(顧客)に、②□□という価値(機能・便益)を、③△△(製品・技術)を使って提供します。」
図にするとこんな感じ。
上図カッコ内の言葉を使うとどれが何を指す言葉か分かりにくくなりますので、
覚えやすい事業ドメインの3要素
- 誰に
- 何を
- どのように
と覚えてください。とても大事な概念です。あらゆるシーンでドメインを定義する訓練をして、いつでも使えるようにしっかりと身に着けてください。
間違いやすい、「何を(機能・便益)」について
ドメインを使いこなすうえで特に重要なのは、”何を”の部分に何を設定するかということです。間違っても商品や技術などの「売りたいもの」を直接もって来てはいけません。人がコンビニで水を買うとき、水という物質そのものが欲しくてお金を払っているわけではありません。その人は”のどの渇きを潤したい”という欲求を満たす対価として金を支払います。このように、購買者が本当に求めているものを思考することで、「商売とは何なのか」という”企業活動の本質”が見えてくるはずです。
ドメイン(事業領域)の使い方
Case.1 ラーメン屋の事業ドメイン
(誰に)あっさり系ラーメンが好きな人に
(何を)幸せな食事体験を
(どのように)この北海道のホタテから作った魚介系スープの特製ラーメンで提供したい!
Case.2 カフェの事業ドメイン
(誰に)オフィス街の仕事につかれたビジネスマンに
(何を)極上の癒し空間を
(どのように)この地中海風の素敵なお店で出すイタリアンコーヒーを飲んでもらうことで提供したい!
以上が事業ドメイン(事業領域)の説明でした。簡単な概念ですので、頭にも入りやすいです。
機能的定義が上手くできるようになるまでには少し慣れが必要です。あらゆる日常の場面で事業ドメインを考える癖を身につけましょう。買い物でお金を払うときに、自分は何に対してお金を払っているのか、本当は何を欲しているのか。
事業ドメインをしっかりと設定し、顧客に対して明確な価値を提供することで、あなたのスタートアップは確実に成功に近づくことができるでしょう。また、商品開発やビジネスプランを作成するビジネスマンにとっても非常に重要な概念です。確実に自分のものにしていってくださいね。
次回は事業ドメインの考え方を発展させ、ビジネスプラン策定やセールススタッフの年度計画書作成について解説します。
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